限りなく透明な果実@渋谷乙『大収穫祭2015 東京編』ライブレポ

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一度耳にしたら忘れられない程に美しい音楽で着々と人気を集める3ピースバンド、限りなく透明な果実。彼らは7月、東京と大阪で「大収穫祭」と題したライブを行った。入場時に“収穫袋”を配布し、見に行ったオーディエンスが良いと思ったバンドの音源で袋を満たしていくというこの企画の、東京公演に足を運んだ。

15時開演という早めの時間だったにもかかわらず、多くの人が集った渋谷キノト。10組のアーティストそれぞれが「収穫されに来ました!」「収穫される気はないんで」「俺も収穫されたい!」などと企画名にも触れながらライブを行った。あるバンドは明るくまっすぐな音楽を、あるバンドはカオティックな轟音を、またあるバンドは吸い込まれそうな透き通った音楽を。9組のバンドがそれぞれのアクトでオーディエンスに“収穫”をもたらし、最後にステージ上に登場したのがこの日の主催者・限りなく透明な果実だ。

真っ赤な照明と、ミラーボールに反射した光が織りなす幻想的な空間。透き通ったギターと重厚なドラムから始まった1曲目は、『さよならスカーレット』だ。多くの人が見つめる中で、フクシマサトル(Vo./Gt.)の声がキノトを満たす。たった3人で鳴らしているとは思えないほどの音圧が、一気に人々の耳と心を虜にしていく。「いつだって 日曜日 誕生日 スカーレット」と歌うファルセットと、透んだバンドサウンドが美しい。「どうもありがとう」と一言だけはさみ、そのまま2曲目『halo:太陽、オレンジ』。今度はオレンジ色の照明が3人を包み、サトルがギターを掲げて掻き鳴らした。「君に会いにいく」というメッセージが、その場にいた人の胸に力強く刻まれていく。

「いけますか!いけそうですね!いけますか!Yes!」と、フクシマアキラ(Ba.)が威勢よく声を掛ける。アキラの楽しそうな表情につられるように、オーディエンスも自然と笑顔になった。続けて、ニシカワユウスケのドラムにサトルのギターが加わる。『アルケミスト』だ。間奏では、ステージの中央で3人が向かい合い、それぞれの楽器を高らかに奏でる。3つの魂がぶつかり合い、爆発するかのようなエネルギーを生み出していた。

次の『レコンキスタ』は、最初に演奏された「さよならスカーレット」と共に9月発売のドーナツ盤に収録される。「再征服」を意味するこの曲は、果実らしい透明感と物語性を持った楽曲だ。さらに、『カンパネルラ』が演奏された。ゆったりと歩を進めるかのようなドラムと、「いびつな道を行け」という力強い歌詞が響く。

「わざわざああいう袋まで作って、何をわざわざこんなことをしてるんだろうと思う人もいるかもしれない。けど、今の俺らの周りにある音楽や周りにいるかっこいいバンドを見てたら、何かしなきゃって」

改めて、この日にかけた想いを伝えるサトルと、それを噛みしめるようにじっと耳を傾けるオーディエンス。その想いを持っていたのはきっと、果実だけではない。多くの人に素晴らしい音楽を届けたいと思うバンドの想いと、素敵な音楽に出会いたいというオーディエンスの想いがしっかりと繋がったからこそ、空だった“収穫袋”は各々が良いと思ったバンドの音源で満たされていたのではないだろうか。

そんなMCに続けてアキラが「みんな袋はいっぱいになったかYeah!」と叫ぶと、一気に雰囲気が変わった。本編最後の曲は『ウッドペッカー』。「歩いていこう どこまでも行こう」と勇ましく歌うこの曲は、その陽気なリズムが“大収穫祭”にぴったりだ。ステージ上の3人も楽しそうに、高らかに音を鳴らす。先陣を切って探検隊を引っ張っていくかのようなその音楽に合わせ、オーディエンスも楽しげに身体を動かす。幸せな雰囲気に包まれて、この日のライブ本編は終わった。

アンコールに応え、再度ステージに戻ってきた3人。乙が、温かい雰囲気に包まれた。再び、感謝を伝えるメンバー。しかし、アキラが喋ってもなかなか反応しないどころか「本当に息上がってるからもうちょい繋いで」と答えるサトルに、「お前が上がってるってことは俺も上がってるわ!」と返すアキラ。兄弟ならではのテンポの良いやり取りと、それを微笑ましげに見守るニシカワの姿は、演奏中の神々しさすら感じさせる3人とは全く違う。自然と、オーディエンスにも笑顔が広がる。

最後の曲は『三番街、発明家』。威勢のよいドラムに、リズミカルなギターとベースが乗る、気持ちの良い曲だ。「オーソレミオ」と繰り返されるフレーズに、思い思いに身体を揺らすオーディエンス。その様子を観ていると、我々がこの日“収穫”したのはCDや音源だけではなかったのかもしれない、と思った。楽しい夜を過ごしたという高揚感や、良い音楽と出会えた達成感。目に見えない収穫も袋にたくさん詰め込んだからこそ、出演者・オーディエンス共に満足げな笑みを浮かべていたのだろう。その名に恥じぬ“大収穫”を多くの人の心にもたらして、この日の企画は終演をむかえた。

取材:小島沙耶


『大収穫祭2015〜東京編〜』
2015年7月4日(土)渋谷club乙 -kinoto-(東京)
出演 : 限りなく透明な果実 / Plot Scraps / ユリイカ / THE サラダ三昧(札幌) / 「少女Aの考察、」 / The Depth of Sad Dreaming / ROOZER / Teenagers Bloody KillinG / where is my mind? / リサ=オフリー

〈セットリスト〉
1.さよならスカーレット
2.halo:太陽、オレンジ
3.アルケミスト
4.レコンキスタ
5.カンパネルラ
6.ウッドペッカー
en.三番街、発明家


▶プロフィール
限りなく透明な果実(かぎりなくとうめいなかじつ)
限りなく透明な果実アー写
(L→R)Dr ニシカワユウスケ / Ba フクシマアキラ / Vo.Gt フクシマサトル

2011年1月、フクシマ兄弟とその友人ニシカワユウスケで結成。3月に初ライブ、1st demo「十字衛生軍」を発売。数々のライブを行いながら、少しづつバンド名はシーンに浸透していく。しかしライブにきてほしいという思いからPVなどの映像の公開はなく、ごく限られた人たちしか実際の音楽を手に取れない状況だった。
2012年1月に2nd demo 「箱舟+マクロファージ」発売、現在廃盤。5月に1st mini album 「サナトリウム.end」を発売。2014年11月、満を持して初PV「halo:太陽、オレンジ」を公開。2015年1月、初の全国流通版Mini Album「LILI&HAL」を発売。

▶️リリース情報
1st レコード『さよならスカーレット / レコンキスタ』
S__22175751
2015年9月9日 発売
¥1,500
《収録曲》
A面 さよならスカーレット
B面 レコンキスタ
※7インチのドーナツ盤(シングルレコード)

▶️筆者紹介
小島 沙耶(こじま さや)
平日昼間はIT企業で粛々とOL活動中、夜中と土日は細々とライター活動中。熱しやすく冷めにくい、面倒なミーハー。邦ロックが好きですが、メロディさえ良ければ何でも聴きます。座右の1曲はRADWIMPS「トレモロ」。
URL:Saya.K Note
Twitter:@asagi_6901134

▶️関連リンク
限りなく透明な果実 公式HP
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