【特集】音楽を「学ぶ」を考える ~音小屋生発、CD交換会をしよう~

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otokoya
音楽を学ぶ、という経験は様々な形であり得る。自分の進路として音楽学校に進むこともあるし、音楽教室に通うことも、音楽雑誌やライナーノーツを読み漁って音楽を自ら学ぶこともまた、音楽を学ぶことの一つかもしれない。

今回は様々な音楽の学び方がある中で、音楽専門誌『MUSICA』が主催する音楽ジャーナリスト育成塾【音小屋】の卒業生が行っている”CD交換会”という試みに注目したい。

◆音小屋とは?

音小屋(otokoya)2012年の春から、音楽評論家・オーガナイザーの鹿野淳氏が始めた音楽ジャーナリスト育成塾のこと。

『MUSICA』の編集・音楽ライター、そして『VIVA LA ROCK』や先日行われた『TOKYO ILAND』などでフェス事業も手がける鹿野氏が講師を務め、これまでにおよそ300人以上が受講した。

2期の大阪集中講座を始め、札幌、福島、名古屋など地方でもクラスを設けてきた。4期ではジャーナリズム科とイベント科も設置、雑誌の創刊や新木場コーストでのイベントも敢行した。現在では音小屋生による音楽ウェブサイト「MUSIUM」の運営も続いている。

そして2013年夏季からは講師陣に音楽ジャーナリスト・小野島大氏、音楽ジャーナリスト・柴那典氏、DISC GARAGE・河津知典氏を迎えて講座を開講している。

◆OBによる交流が熱い

毎年、音小屋生による新年会が行われている。2015年1月の開催時には総勢100名を超えるOBが参加しており、自己PRや社交の場となっているのだ。講師陣も新年会に顔を出してくれることから、編集者や音楽イベンター、ジャーナリストの卵たちにとって、自分が教わったことのない講師と話せる絶好の機会にもなっている。

こうした交流を通じて、早耳リスナーである音小屋生の最新音楽情報交換はもちろん、音楽について語らう仲間ができ、実際に音楽ビジネスを立ち上げるきっかけにも繋がっている。

◆早耳リスナーが集う音小屋生のブーム?CD交換会とは

OTOZINEコラムニスト・Ai氏も音小屋を受講した一人である。彼は以前、OTOZINEでこんな記事を紹介してくれた。

Aiコラム 「第7回 CD交換会の話」

音楽ジャーナリストの柴那典氏も毎回参加するという、このCD交換会。ただの飲み会ではなく、音楽によって繋がった人たちが互いに音楽を紹介し合い、音楽を肴に酒を飲む。CDの存在価値が問われる中でCDという形のあるものを贈るのは感慨深いものがある。また、この記事を見た読者からも「今度自分もやってみよう」という声が上がっており、気軽に出来る企画として注目されていた。

どうしても音楽好きによる小中規模の集まりではBBQやカラオケが多くて、マンネリ化を経験した人もいるのではないだろうか?かと言って、DJイベントを組むにも費用や手間がかかる。CD交換会ならすぐ実践できるし、初対面の集まりでも話題はバッチリだ。同じミュージシャンのファン同士の集まりなら、グッズ交換なんて企画にも発展しそうな予感もする。

ちょっとしたブームを起こしそうなCD交換会。その第3回目が6月末に行われた。その際に音小屋生はどのようなCDを持ち寄り、どのような想いをぶつけたのか?講師・柴那典氏も含む参加者の一部からコメントをもらうことが出来た。


Royal Blood『Royal Blood』


イギリスから突如として現れた2ピースバンド。しかもベース+ドラムというリズム隊のみの編成という珍しさ。しかしながら、「ベースってこんなに豊かにメロディを奏でるのか!」って思わず感動するくらいアルバム全編を通してバラエティ豊かな音が鳴っています。世界各国のフェスに出演し盛り上げまくっている彼らは、今年のフジにも出演!フジロック、ホワイトステージでのライブはいい意味で期待を裏切る圧倒的なロックンロールを鳴らすライブでした。苗場が震えたぜ!

Ai_Tkgk / 31歳 / 会社員
もらったCD:NOT WONK『Laughing Nerds And A Wallflowe』

藤井隆『COFFEE BAR COWBOY』


藤井隆の芸風は「憑依芸」です。バラエティでキレのあるダンスをしている時のキャラへの没入っぷりやフィジカル能力の高さこそが彼の芸人としての魅力です。そして、そんな彼の芸風はそのまま音楽性にも通じています。これまでは松本隆や堀込高樹の楽曲の世界観を完璧に表現しきっていた彼が、本作ではついにセルフプロデュース。しかもダンスミュージック。その結果、自ら構築した緻密な世界観と、彼の身体的キレが組み合わさったポップスが生まれました。音源だけでも最高ですが、やはり彼の音楽はパフォーマンスも含めてこそ。楽曲を気に入ったらライヴにも是非。

荒池彬之 / 25歳 / 社会人・MUSIUM編集長
もらったCD:おとぎ話『CULTURE CLUB』

セカイイチ『THE BAND』


バンドマンによる、バンドマンのための1枚です。6月6日恵比寿リキッドルームで行われたつばきの「正夢になったフェス」。そこに集ったのは、2010年に突然のアクシデント見舞われたつばきを支えてきた同期のLUNKHEAD 、LOST IN TIME そしてセカイイチも。そこで歌われたのがこのアルバムのラストナンバー「バンドマン」。〈いつも金はない/何も買う金はない/でもそうだろう/俺たちの歌はアイツを変える〉〈バンドマン/涙が乾くようなやさしい歌を聴かせてよ〉出演者の大半は30代も半ば。大ヒットとは無縁のバンドばかり。それでもまだ、彼らはバンドマンとして生きている。バンドマンが死ぬまでバンドマンでいることはとても難しい。だから悔しいニュースを聴いたとき、やりきれないライヴを観た時、私はいつも、祈るような気持ちでこの〈負け犬のナンバー〉を聴きます。バンドが大好きな、すべてのひとへ。

イシハラマイ / 秘密 / 社会人・音楽ライター
もらったCD:Hudson Mohawke『Lantern』

Cymbals『anthology』


時は1997年、後の世代に大きな影響を与えるたくさんのロックバンドと一緒にCymbalsはデビューするわけですが、1990年生まれのぼくが最近までその名前を知らなかったように、他のバンドほどの影響力を持つことができずに解散してしまったわけです。彼らが時代に大きな爪あとを残せなかった理由を、ぼくは「90年代という時代の変化」と「それに伴う音楽の聴かれ方の変化」に見ています。その辺のことを個人ブログに書いたので、読んでみてください。

伊藤駿 / 24歳 / 編集・ライター(見習い)
もらったCD:水中カルビ『若気の至り』

BIGMAMA『short films』


BIGMAMAの1st Albumです。最近の曲では、ピンマイクを持って歌う金井さんがまだベースを弾いていた頃の楽曲が収録されています。収録されている曲の中でも一番好きなのが「in my bed room」で、ギターの柿沼くんの歌がとても好きなので、パートが多くて好きです。(笑)この機会に今とは違った昔のBIGMAMAもきいてみてください!

大和田茉椰 / 22歳 / 大学生
もらったCD:藤井隆『COFFEE BAR COWBOY』

ARCHAIC RAG STORE『After the Dawning』


平均年齢が20歳の若手バンドながら、鴻池ハルカ(Vo&Gt)と横山航大(Ba)は中学生の頃に前身バンド「Ledy Joe」で浅井健一プロデュースのもと活動していたキャリアを持つ実力派。彼らのライブを見て「サラリと軽快な身のこなしで、根っこが火傷しそうなほど熱いロックバンド」だと感じたのですが、今作は正にそれを象徴した1枚です。男気もあって、ちょっと不器用だけど真っ直ぐで。彼らを見ているとロックンロール全然カッコいいよ、全然最高だよって誇れるようになります。

加藤彩可 / 23歳 / OTOZINE編集長・ミュージシャン
もらったCD:bacho『最高新記憶』

りぶ『singing Rib』


ニコニコ動画を中心に活動している「歌い手」りぶの3rdアルバムです。「動画共有サイト随一と呼ばれる圧倒的な歌唱力で注目を集める人気歌い手」と言われる彼ですが、その魅力は高い技術力だけではありません。注目すべきは、歌い方を曲によってがらりと変えるところ。1曲1曲、声一つでその曲の主人公を演じています。とても聴きやすいアルバムなので、ボカロやその周辺に興味はあるけれど何から聴けば良いか分からない人、また苦手意識を持っている人にもオススメの1枚です。

小島沙耶 / 22歳 / 編集者
もらったCD:セカイイチ『THE BAND』

Hudson Mohawke『Lantern』


いつもその年の個人的ベストを持っていくことにしていて、2013年はダフト・パンク、2014年はファレル・ウィリアムスでした。今年はZEDDかハドソン・モホークか迷ったんだけど、ハドソン・モホークは2013年のダフト・パンクと同じように数年後から振り返って「世界の音楽シーンの流れのターニングポイントになる一枚」になると思います。
このCDについて書いた柴氏のnoteがこちら

柴那典 / 39歳 / 音楽ジャーナリスト
もらったCD:Family Basik『a false dawn and posthumours notoriety』

水上カルビ『若気の至り』


2013年閃光ライオット出場のロックバンド、水上カルビのベストアルバム『若気の至り』です。誰にだって青春はありますよね?その青春の中にある、どうしようもない悩みや葛藤を私たちの代わりとなって、唄ってくれるのが水上カルビです。今となっては馬鹿な事で悩んでいたなと思いに馳せる事も彼らの音楽の楽しみ方の一つです。

畠山拓也 / 20歳 / 大学3年生
もらったCD:Suchmos『Essence』

Suchmos『Essence』


平均年齢20代前半との事ですが、音楽に色気があるバンドでして、余韻タップリな都会派?な音色に腰が揺れるようなグルーヴでして、なるべく深夜に愉しみたいバンドだと思います。ヨンスさんの声も、オリジナルラヴを彷彿とさせる深みのある声で、ブラックミュージックが好きな人には堪らない音との絡み合いです。これが、初のCDとは思えないくらいの仕上がりでして、5年後も愛してしまうバンドだと思っています。

フカツトモカ / 36歳 / 秘密
もらったCD:シシドカフカ『Kの累乗』

Not Wonk『Laughing Nerds And A Wallflower』


andymori以来の衝撃。苫小牧のThe Get Up Kids、あるいはThe Libertines。ここまで鮮やかに中指を立てるパンクバンドに、僕は初めて出会った気がします。子供と大人の間、オシャレとダサいの間、そこを行き交う手段をパンクで実現した作品です。まさに、いま進行形で強烈な光を放っている音楽。NOT WONKというバンド名そのものもそうだし、歌詞についてもいちいち語りたくなるめちゃくちゃ最高なバンドです。

堀中敦志 / 31歳 / 秘密
もらったCD:鳴ル銅鑼『無知』

Family Basik『A False Dawn And Posthumous Notoriety』


Family Basikは、東京在住の加藤遊さん、金沢在住の加藤りまさんの兄妹デュオで、名前の由来は任天堂のゲーム「Family Basic」です。ドリーミーなフォークサウンドにカセットテープ等が持っているアナログな空気感を付加させた暖かく、どこか哀愁漂う音楽は緻密な音の重なりで構築されているのですが、心地良く、サクッと一枚を通して聴くことができます。
ヒッソリと第七回のCDショップ大賞の北陸ブロック賞を受賞していたりします。楽曲のライブでの再現が難しい事や、住んでいる場所が別々の為に、一緒に練習する事が出来ない事から、ライブの予定は現在無く、幻のものになっております。

鷲津隼平 / 23歳 / 大学生
もらったCD:りぶ『singing Rib』


それぞれが熱い思いを語り合い、とにかく盛り上がるCD交換会。なんとなく避けてきたジャンルへの偏見も取り除くことが出来て、新しい音楽との出会いに胸が高鳴る良い1日であった。音小屋生という多種多様なジャンルのリスナーが揃ったこともあるが、ジャンルの違った人と一緒に交換会をすることもまた面白みを広げる要因になる。紹介しているyoutubeを元に、読者にもどんどん新しい音楽を開拓して行って欲しい。

また、音楽ジャーナリスト育成塾「音小屋」は現在2015年度の夏期講習を実施中。コースは主宰である鹿野淳氏による”フェス作り”の講義、今回のCD交換会発足人の一人である柴那典氏による”音楽メディア”の講義、そして音楽ジャーナリストとして活躍する小野島大氏による”音楽ジャーナリズム”の講義と3コースを設置している。残念ながら今回は既に講義が始まっているが、次回の開校時には音小屋に応募して講師陣や仲間と共に音楽の未来を作り上げよう!音楽を学び、開拓し続けることが、これからの音楽を作る第一歩となるに違いない。

取材:加藤彩可

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