【特集】音楽を「学ぶ」を考える 〜音楽学校「メーザー・ハウス」出身バンドに迫る〜

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10月は進学希望者にとって学校選び大詰めの時期だ。本格的な進路選択を考える中で「音楽を学ぶ」ことを視野に入れている学生や、社会人になって音楽を勉強したいと考えている人もいることだろう。
前回の特集では音楽塾に焦点を当て、音楽専門誌『MUSICA』が主催する音楽ジャーナリスト育成塾【音小屋】をご紹介したが、今回はより“学校”というキーワードに寄せて、音楽学校【メーザー・ハウス】に注目。音楽を学んできた在校生や卒業生が何を学び、今どのように活動しているのか。7月12日に行われた「メーザーフェス」の模様をお伝えし、出演者のインタビューをお届けする。

[取材:加藤彩可、イシハラマイ]


◼「音楽学校 メーザー・ハウス」とは
︎音楽学校 メーザー・ハウスはプロミュージシャン、ボーカリスト、クリエイター等の育成を行う音楽学校。目まぐるしく変化する音楽の状況に柔軟に対応しつつ、即戦力となる人材を輩出し続けている。
卒業生には元BLANKEY JET CITYのドラム中村達也氏や、ジャズを中心に幅広い活動を続ける菊池成孔氏、ハワイアンシーンの若手シンガー平井大氏など、さまざまなジャンルで著名なミュージシャンがいる。
またメーザーの魅力は才能豊かな講師陣にもあり、ASUPARAGUS / MONOEYS等で活躍するドラム一瀬正和氏や、「ガンダムSEED DESTINY」エンディング曲を担当した有坂美香氏など、トップクラスで活躍する一流のインストラクターから教わることが出来る。

◼メーザーフェス︎から見える、メーザー出身ネクストブレイク
2015年7月、メーザー・ハウスにて学校主催イベント「メーザーフェス」が開催された。このイベントはメーザーの在校生や卒業生が出演するいわば文化祭で、今回が2回目の開催となる。OTOZINEはこのイベントの出演者を、ライブハウスシーンで活躍しているネクストブレイクとして注目。ライブレポートとインタビューを含む、独占取材を行った。また、ゲストはメーザー卒であり、7月にメジャーデビューをしたThe Cold Tommy。彼らが語ったバンドの在り方にも、ぜひ着目して欲しい。

【紹介するメーザー・ネクストブレイク】
雨の花束 / fulusu / さとうみほの / TRY TRY NIICHE / ゆうせいから / amenoto / THE WORLD / Gilet / The Cold tommy


*雨の花束(メンバー全員メーザー出身)
雨の花束
メーザーフェスのトップバッターを務めたのは雨の花束。「ファイト!オー!」とステージ上で気合を入れたメンバーが定位置に着くと、美しいアルペジオが鳴り出し「心象周期3」でライヴをスタートさせた。林恒平(Vo,Gu)の夢見心地でエアリーなヴォーカルが早々にフロアを優しく魅了する。
続く「均整のとれた世界」では谷口智紀(Gu)がフロアに降り、長い髪を振り乱しながらぐるりと練り歩き、最後はフロアのど真ん中でギターソロを披露。早くも観客を味方につけた。
真っ赤な照明に照らされながら林が力強い声にシフトして歌う「シグナル」は鬼気迫るロックチューン。阿部絵平(Dr)が作り出す緊張感の高いビートが暴れまわる中、最後は林のシャウトが締めた。「最高のフェスになっていると思います!」と谷口のMCが始まると、観客から「鼻から血が出てる!」の声。見れば谷口の鼻の上部が出血していた。あまりにも激しくプレイするあまりに怪我をしてしまったらしい。
気を取り直して最終フェーズへ。バンドの良さがぎゅっと詰まったセンチメンタルナンバー「ソラチルアウト」から井嶋素充(Ba)のベースで始まるアンニュイでセクシーな「エーエルソング」を一気に畳み掛ける。「ありがとう」と林が挨拶。ラストは「マルティン」で締めくくった。

《セットリスト》
1.心象周期3 / 2.均整のとれた世界 / 3.シグナル / 4.ソラチルアウト / 5.エーテルソング / 6.マルティン

【インタビュー】
――メーザーに入ったきっかけから教えていただけますか?

林恒平(Vo,Gu):やっていたバンドがダメになって一回基礎からやり直そうって思ったのと、メンバーを探したくて入りました。実際に同じ授業で一緒になったメンバーと雨の花束を組めたので、すごいありがたいと思っています。

阿部絵平(Dr):自分を鍛えるためっていうのはみんなある。それは効果があったと思います。

谷口智紀(Gu):アンサンブルやリズムへの影響は一番大きかった。相手の音を聞いて自分の音をそこから探していくというか。ギタリストは特に自己主張が大きいから、バンドでどう聴こえるかは気をつけるようにしてますね。そこを学んだ気がします。

――今日の6曲だと最初の方はギターのノイズや、ベースのリフがグイグイきて圧倒される感じでしたが、最後の方は楽しげでしたし、ノレて爽やかな印象でした。

谷口:前半の方が先に出来た曲ですね。

阿部:今までの曲は暗いものが多かった。後半のダンサブルな曲はいろいろやっててできた曲です。次出すとしたら明るい系のものを作りたいかな。

林:リズムアプローチが一人のアーティストで一つの種類しか持ってないっていうのがあんまり好きじゃなくて。サウンドのバリエーションとも、同じノリや同じ譜割り、同じ構成の曲が何曲もあるよりは、いろんなノリの曲がいっぱいあった方が良いなって思っています。

――在校生に対してメッセージがあればお願いします。

井嶋素充(B):僕はここで試された。先生とか友達、先輩は、さも正解のようにいろいろおっしゃってくれるんですけど、それでも「いや待て待て!俺はこうなんだ」って曲げないことも必要。それはほぼ毎日起こるので、それを柔軟に受け入れる姿勢と、ブレずにしっかり進むことのバランスが大事です。

阿部:2年間ってけっこう短いじゃん。2年間通って卒業して、ちょっとしたら「あー今から2年間通いたいな」って思う時期はあるよね。だから後悔をしないように。この学校生活を充実したものにしてもらえればと思います。

林:僕は、なんとなくいちゃったら良くないと思うんです。できるだけ自分と違う考えを持ってたりとか、できるだけ自分より大きいなって思える人に触れる機会を増やしてほしいですね。「何言ってるんだろう、この先生は」っていうときのほうがチャンスだと思う。今の自分よりも大きくなるというのを求めてほしいなって思います。

雨の花束 公式HP


*fulusu(Dr.佐藤丞がメーザー在校生)
fulusu
驚異の18歳、本多弦(Vo,Gu)率いる3ピースバンドfulusu。耳をつんざく様にヒステリックなサウンドと、語りかける様な本多弦のヴォーカルがあやしく重なる「lie ill」から一続きにソリッドなロックナンバー「暗い部屋」を披露した。“簡単なフレーズが許せない”という本多弦がテクニカルで変態的なギターフレーズを炸裂させる。その卓越した技術と長身のルックスが相俟って、18歳という年齢がだんだんと疑わしく思えてくる。
「cor」では村山ロンテ(Ba,Cho)と佐藤丞(Dr,Cho)のリズム隊が作る分厚いグルーヴとハイトーンまでしっかり聴かせる本多弦のヴォーカルがぶつかり合い、エッジの効いたバンドサウンドで聴く者を魅了した。
すると今度は柔らかな歌声のミドルナンバー「約束」、1990年代のヴィジュアル系サウンドを彷彿とさせるナンバー「mirror image」とバンドの楽曲の幅の広さを見せつける。
ラストナンバーは10月13日発売の新曲「ash」。佐藤丞がスティックを打ち鳴らしカウントを取ると、村山ロンテのベースが唸り、本多弦は凛として時雨を彷彿とさせる神経症的狂気と耽美のギターリフを掻き鳴らす。それにしてもよくもまあ、歌いながらここまで弾くものだ。最後は18歳の少年の顔に戻り、「ありがとうございました」と笑顔を見せた。

《セットリスト》
1.lie ill / 2.暗い部屋 / 3.cor / 4.約束 / 5.mirror image / 6.ash

【インタビュー】
――みなさんは、どんな経緯で出会われて今至るのでしょうか?

村山ロンテ(Ba,Cho):この子(本多)が16歳のときに19歳って書いてネットでメンバー募集していたんです。俺はその時21歳で、2個差だし、若い子の方が将来性ありそうだなって飛びついたら16歳だった(笑)。最初はサポートドラムでやっていたんですけど、1年前の10月に(佐藤に)正式加入してもらいました。

――最近の活動のご様子はどうですか?

本多弦(Vo,Gu):10月にシングルを出します。かっこいいんですよ。はじめて速くて、切れが良くて、fulusuって感じの曲が発表できる。自分たちでも気に入ってる曲です。

――どんな曲聴いて来られたんですか?
本多:リップスライムを聴いて、やべーってなってアルバム全部コピーしました。あと友達からムックを借りたらギターかっけーってなって。

――今日のライブを見て、V系っぽいにおいがするなと思っていました。

佐藤丞(Dr,Cho):クサメロあるね。ちらほら出てくる。

村山:あと共通してみんな時雨好きだよね。

――丞さんの場合は学校で学ばれたわけですけど、肥やしになったことは?

佐藤:ゼミの先生は菅沼孝三先生です。授業で本人が結構叩いてくれるんですよ。それを録音して動画を撮ったり、盗める機会がいっぱいある。マジでここ来てよかったなって思いましたね。

――学校だけじゃないかく、各々が音楽に通じるなにかを得た体験みたいなのってあったりしました?火がついた瞬間とか。

村山:こいつのネット募集音源を聴いたときに、ああ大丈夫だって思いました(笑)。こいつとやれば大丈夫だって。19歳でこれかって。

本多:僕は16歳から変わってなくて、もっと成長したい。あと僕の名前は弦ですけど、両親も音楽やっていて僕も弦楽器もやってました。バンドやるとは思ってませんでしたね。バイオリン続けると思ってた。

村山:じゃあ産まれた時が人生の分岐点だったのか(笑)。

佐藤:これを弾きながら歌えるのがすごいって言われたくてやってるんだもんね(笑)。

本多:そうですね(笑)。歌が追いついてないと指摘されて、もうちょっとギターをシンプルにして歌に重点置いたらって言われるんですけど、それじゃダメ。あのギターを弾きながら上手く歌わないと、みんなと一緒だなって。

――今後の意気込みを聞かせて頂けますか。

村山:正の連鎖を生んでいきたい。音源バンバン発表していきたいですね。もっと勢力的に活動していきます。

fulusu 公式HP


*さとうみほの(メーザー在校生)
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透明感と小悪魔感を併せ持つキュートな歌声のシンガーソングライター、さとうみほのが登場。1曲目「私のこと」では〈もしも他の誰かに私が盗られてもいいの?〉〈私のこと嫌になるほど愛してよ〉と小悪魔っぷりを発揮。その可愛らしさも然る事ながら、注目すべきは歌の力強さ。この日はバンド編成でのステージだったが、バンドサウンドに全く引けを取っていない。
「こんなしっとりしている曲のあと聞くのもアレだけど…盛り上がってるか―い!エレキ持っちゃうからね!みんな、覚悟はできてるのか!」と少年の様に無邪気なMCから「覚悟して待たれよ!」へ。スニーカーを履いて全力疾走したくなるような、痛快なナンバーだ。透明感あふれる歌声が作り出すハッピーな空間に、ハンドクラップが巻き起こる。
ロックテイストな新曲「何度も」から、最後は再びアコーステイックギターに持ち替え「各駅電車」を披露。弾き語りからバンドへと展開してゆくサウンドが、日々移ろいゆく日常のワンシーンを描く。そんなハートウォーミングな曲をしっかりと歌い切り、最後は「またどこかでゼッタイ会いましょう!」と、とびきりの笑顔でステージを後にした。

《セットリスト》
1.私のこと / 2.覚悟して待たれよ! / 3.何度も / 4.各駅電車

【インタビュー】
――音楽を学ぼうと思ったきっかけは?

さとうみほの:最初は裏方に回ろうと思ったんですけど、やっぱり前に立って舞台に立ってやっている人に憧れていたんです。音楽学校に見学だけでも行ってみよう思って、その時の先生にビビビッてきたんです。この人に習ってみたいなって。人生は一回だしやりたいことをやろうって思って、入っちゃえって(笑)。

――その時にビビッときた先生にはその後、習えた?

みほの:習えました。今もずっと習っていて、今もビビッと来ています(笑)。人間性なのかな。パッと立った時に立ち振る舞いとか、すごく引き込まれる。太陽みたいな人です。周りも明るくしちゃうようなところに憧れます。

――ずっと歌は歌っていた?

みほの:カラオケとか、本当に趣味程度な感じ。軽音部で歌って、ライブハウスの大会とかに出ていました。今はバックにバンドが付いてもらってバンド形式が多いです。でも路上で弾き語りもやることが多いです。

――学校で歌を習うようになってから変わったところはありますか?

みほの:全部変わりました(笑)。高校の時の音源を聴くと可愛く声を出そうとしていたり、誰かを真似していた感じがするけど、今は自分の声で歌えるようになったし、言葉も聞き取りやすい歌い方になりました。

――今後はこんなことをしてみたいってありますか?

みほの:来年の3月にレコ発をやろうと思っています。1つ前に作ったアルバムとは少し方向性を変えてみようと思っていますが、方向性で悩んでます。

――今までの方向性として、ご自身はどんな印象をお持ちでしたか?

みほの:生楽器に対する執着があって、打ち込みが嫌だってずっと言ってたんです。でも最近は打ち込みの音楽も増えているし、今までお客さんがいっぱい付いたわけでもないから、1回変わってみるチャンスじゃないかと。そっちに寄せていって、それでも自分がぶれないでいられるか。

――作詞作曲もご自身でしていますが、そこもメーザーで学べましたか?

みほの:作曲に関してはセオリー(音楽理論)の勉強がためになりました。作詞は勉強というよりも、人生のいろんなことを教えてもらった感じ。「別れ際には花の名前を教えろ」とか(笑)。男女が別れてしまった時に「私キンモクセイが好きなの」って言ったら、キンモクセイを見る度に思い出すとか。そういう人を惹きつけるセリフっていうのは魅力的ですね。

さとうみほの 公式HP


*TRY TRY NIICHE(Vo,Kye奥山翔平がメーザー在校生)
いま、若手ロックバンドの中でも一際注目を集めているTRY TRY NIICHEだが、実は彼らの記念すべき第1回目のライブが行われたのはこのメーザーフェスだったのだ。
しかしながら、今回OTOZINEのリサーチ不足により、TRY TRYNICHEがここまで注目度の高いバンドになることを予想できておらず、今回ライブレポートやインタビュー取材を行うことが出来なかった。しかし、今後TRY TRY NIICHEには単独取材を実施し、彼らの全貌を明らかにすることが決定した。その際は是非ともチェックして欲しい。
TRY TRY NIICHE 公式HP