限りなく透明な果実 問題作『Troll Tochk』に込めた”怒り”と”ロマン”とは

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2015年の限りなく透明な果実は、とにかく攻めた。1月にキャリア初の全国リリースとなる『LILI&HAL』を発表し、7月には「大収穫祭」と題した東京・大阪にける主催ライブ、9月にはアナログ盤『さよならスカーレット/レコンキスタ』のリリースを行った。また、ライブ主義の彼らが今年だけで4本もMusicVideoを製作しており、11月には「デザインフェスタ2015」にて彼らの世界観を詰め込んだ大人気グッズ販売を行い、今作『Troll Tochk(トロールトーチカ)』をモチーフにしたレイアウトも大盛況だった。
正直、2013年に会場限定リリース盤を1枚出したきり、2014年は表立って何か活動を仕掛けることはしていない。なぜ、今なのか。
今回の取材はフロントマン・フクシマサトルから「とんでもない問題作が出来たから、話しを聞いてくれないか」と連絡が入ったところから始まる。彼らをここまで追い立てる存在とは一体なにか。サトル氏による単独インタビューを是非ご覧いただきたい。
[Interviewer:加藤彩可]


孤独を感じていた時、アントワネットが俺の中で圧倒的な孤独の象徴に思えてきた

ーーまず今作に至った経緯を教えていただけますか。

とても集中的に、短い制作期間で作った作品になります。8月から9月にかけて、2ヶ月くらいで作ったのかな。

ーー「トーチカソング」はMVも作られて。

首都圏外郭放水路という場所で撮りました。地下30mで、ここまでドラムセットとか機材とか降ろすのが大変だった。雨が降ったら中止だし、見学者が来る度に撮影を中断して。

ーー柱とか、かなり長そうですよね。

すごく巨大な空間。一番奥にジャンボジェット機のエンジンみたいなのが搭載されているらしくて、飛行機を飛ばすくらいの動力で水をグワーっと流すらしい。

ーー前回のアルバム『リリエンタール』では発明家や音楽家の抱える切なさがテーマにあり、今作は更に物語の奥に入り込んだような豊さを感じました。制作で意識していたことってありましたか。

全体的に歴史がテーマになっています。自分の音楽性に対してもがいている時にさまざまな歴史的事象について考えていて、その事象に自己投影した曲が多くなった。一番わかりやすいのは今回の「アントワネット」だと思う。孤独を感じていた時、アントワネットが俺の中で圧倒的な孤独の象徴みたいな存在に思えてきたんだよね。彼女に自己投影して歌詞を書き上げました。

ーーアントワネットの切なさや悲しみはサウンドにもすごく出ていました。彼女は贅沢で華やかという印象があったので、孤独として描くところが新しいと思ったんですよ。

確かに。実は僕は華やかという印象を彼女に対して持っていなくて。華やかな部分と孤独な部分は表裏一体でしょ?僕は孤独な方にしか目がいかなかった。最後は処刑されてしまうわけで、それを思うといくらでも曲が書ける(笑)。

 

自由研究でコインが小さい順に落ちて、コインを分ける装置みたいなのを作りました

ーーそれぞれの曲の時代背景は特に統一していない?

結構飛んでしまっている。「アンティキティラ島」は世界最古の計算機が100年前くらいに発見されたんだけど、良く調べると紀元前のものだったって話。金属の塊みたいなもので、計算機というか天球儀として使うものなんだけど、それがアンティキティラ島で発見されたという、いわゆるオーパーツですね。「象の足音」は”象の足”という、見たら死ぬと言われている放射性物質の塊があるんです。チェルノブイリの放射性物質がコンクリートを巻き込んで出来た物体で、見た目が象の足みたいだから”象の足”って言われている。あとは、なんとなくギターのリフを弾いて、象の足音みたいだと思ったことかな。その2つがあって、曲に仕上げました。

ーー「象の足音」はちょっとエスニックな曲ですよね。アジア的というか。「アンティキティラ島」など、割と西洋の匂いがするバンドだと思っていたので斬新な感じがしました。

初めてですね。楽曲の多面性は完全に実験です。遊びですね。やってみたら意外とアルバムのパーツになったので、新しい発見でした。

ーーチェルノブイリのことは、以前から書きたかったんですか?

チェルノブイリというよりも放射線についてずっと書きたかったですね。放射線のような見えない光の波長が、身体を突き抜けて影響を残していく様子が美しいと思ったんです。発明と進化はとても近い事柄だし、それが人類という大きな規模で影響を及ぼす。このことは前回のアルバム、リリエンタール兄弟についてとほぼ同じステージで書いています。

ーーサトルさん自身も発明に興味があったんでしょうか。

あります。発明家になりたいね。ものを作るのは小さい頃から好きでした。小学生の自由研究でコインが小さい順に落ちて、コインを分ける装置みたいなのを作りました。あとはガン消しを複製したくて、粘土に型をとって金属を流し込みたかったんだけど、小学生で扱える金属ってあんまり知らない。で、溶かすには半田と鉛がいけるんだと思ってやってみたら、粘土が溶けちゃったりとか。

ーー「ニュルンベルクの卵」はもともとSEでも使っていたわけですが、今回入れようというのは制作の段階から思っていたんですか?

うん。これはニュルンベルクの卵という時計の革命的事象をモチーフに書きました。あまりにもSEだけではもったいないと思ったし、テーマも非常に関連性の高かったのでアルバムにも収録しようと思いました。一時期時計の歴史にハマってたんだよね。何年かに一人天才が出てきて、大きく歴史を100年分くらい進めちゃう。そういう皮肉やロマンを描きたかった。

ーー曲作りでは、常にこうしたモチーフになるストックがある?

そうですね。なんとなく曲を作ると同時進行でモチーフが出てくるんですけど、結構前から書きたいと思っていたことがほとんどかな。