限りなく透明な果実 問題作『Troll Tochk』に込めた”怒り”と”ロマン”とは

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純粋な曲が作りたいという1点のみ

ーー「さよならスカーレット」は9月にアナログ盤としてもカットされています。

「さよならスカーレット」だけはもう3年、4年前から演奏していて、この曲が軸にあったから他の曲を作っても大丈夫かなという感じでしたね。この曲をどう出すか考えた時に、アナログ盤が一番ベストかなと。で、試しにメンバーに提案したら「よし行こう」ってなって、取り返しがつかなくなった(笑)。

ーーMVになったアニメーションも、すごくマッチしていました。ちょっとセンチメンタルでありつつ、温かい気持ちになる。

すごく良い。綺麗だよね。映像作家の外山光男さんにすごく愛情のある映像を作ってもらって。僕が1ファンだったので、1年くらい前に初めて直接オファーをしました。その時に曲を全部送ってすごく気に入ってくれて、今回作ってもらえることになったんです。すごく嬉しかったですね。バンドやってて良かったと思いました。一番嬉しかったかもしれない。一つの作品として感動しました。

ーー実際、ホロリとするところもありますよね。

でも、なんでホロリとするのかよく分からないんだよ。奥底にあるノスタルジーをくすぐるんだよね。最後3分45秒くらいのところで衛星が落ちてくるシーンがあって、ここで勝手に号泣する。この曲自体が、センチメンタルとノスタルジーで出来ていると思っているんですね。不純物が一切ない。メンバーに雑念を捨てて作曲しようと伝えて、精神統一をするところから作り始めた気がします。純粋な曲が作りたいという1点のみでした。

 

音楽って基本的にすごくエゴイスティックなもの

ーーサトルさんの思う純粋って、どういうものなんですか?

音楽って基本的にすごくエゴイスティックなものだと思っていて、自己顕示欲や主張、なにが好きとか嫌いとか…そういうのを嫌だなと思う時がある。だから、水や空気のように澄んだ曲が作りたいと思って作ったんです。

ーー適切かわからないんですが、童謡や「みんなのうた」のような純粋無垢さを感じたんです。子どもたちに曲や映像を見て欲しいと思ったんですよね。大人になるほど出てくるエゴや雑念を捨てたからこそ、出せる部分でもあるのかもしれないんですが。

なるほど。一方で大人になったからこそ、この曲の良さがわかるのかなとも思いますね。

ーー確かに。青臭い若者がこの曲を聴いて心に染みたなら、その瞬間本当の大人になれるのかもしれない。尖った時期にも触れて欲しい作品ですね。

尖ったバンドマンは周りにいっぱいいるんですけど、聴いてよって勧めると「あの曲マジでいいです」って言ってくれる奴がいっぱいいたな。

ーーきっと届いたのかもしれないですね。「透明な兵士」はどのようなところから生まれたんでしょう。

最後はとても行き詰まってしまって。最後に作ったので、このアルバムをまとめる曲はなんだろうってハードルが上がってしまった。そのあと自分の中で開き直ってしまった曲ですね。この曲は「さよならスカーレット」とは逆に、すごくエゴイスティックな曲です。言いたいことを言わせてもらいましたという感じ。

ーーここで最も伝えたかったことはどんなことなんでしょう。

タイトルにあるように戦場にいる兵士の孤独。隣でバタバタと死んでいくような、ギリギリの生命の状態と孤独感がアルバム全体のテーマでもあったんだけど、それを自分の言葉で書けたかなと思います。

 

作り終わった当時は「なんてセンセーショナルなものを書いてしまったんだ」と思った

ーーアルバムを通して、戦争や放射線、科学と人間の向き合い方というものを連ねた作品になっています。サトルさんの描く世界はノスタルジーやアンティークなど、過去に触れることが多いですよね。でも今回はどこか現代にも通じるテーマで、今の情勢と結びつけようという意識はあったんでしょうか。

意識は全然なかったです。でも制作途中に国会前でデモが起きたり、法律も大きく変わったり、毎日スタジオに入っているだけなのに時勢は変化するわけで。その中で怒りみたいなものはあって、世間で起きていることに対して何のアプローチも出来ない自分に対してもどかしく思ったり、そもそも今のシーンにいるバンドが何を発信したら良いか迷走しているように思えて。

ーーでも、結果的に結びついたくらいの感覚だったと。

今回の出来事も長い歴史の中の一つの通過点だと思っているんです。もっと並列として扱っています。

ーーなるほど…歴史観が非常に壮大ですよね。

そうなのかもしれないですね。あんまり今だけっていうのはないです。

ーー最初にお話をいただいた時に「今作は社会問題について打ち出した問題作だ」とおっしゃっていました。ご自身の中でそれを感じたのは作り終わったあとですか。

うん。その瞬間結構思ってたね。作り終わった当時は「なんてセンセーショナルなものを書いてしまったんだ」「役目は終わった」って思いました(笑)。

ーーその時より今は若干冷静になっている?

なってる。こうやって話す機会もいただいて、客観的に話せているので。

ーーそこで整理していった感じなんですね。でもやっちゃった感はあったと(笑)。

ありましたね(笑)。ちょっと前の僕は。

ーー今、これから世に出るという中で今作をどう捉えていらっしゃいますか。

自分の中では、よくやったなという感じです。それ以外は聴いてくれた人に判断をお任せしたいなと思います。

 

どう生き残るかというサバイバルの真っ最中

ーーデザフェスのことも聞かせていただければと思うんですが。

お陰様でグッズが売れているので、何か還元したいなと思ったんです。本当は演奏もしたいと思ったんですが、今回横長に3ブース取って、どんなに横に取っても縦の奥行きでブースを取らないと演奏しちゃいけないらしいんですよ(笑)。だから演奏はできません(笑)。

ーーじゃあいずれまたの機会ということで(笑)。基本はグッズが並んでいて。

そうですね。基本的にはアルバムの発売に合わせたレイアウトで、あとは今回制作したグッズやフクモトエミさんとのコラボTシャツとか。どうやらCDの発売に合わせて一緒にグッズを置いてくれる店舗もあるんです。だからグッズだけが広まっていくこともあるかもしれない。

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ーーそこでグッズが広まって、果実ブランドのようになれば今後更に広がっていくかもしれませんね。その後の活動はどのようにされていく予定ですか?

実はまた年内にレコーディングをする予定で。年明けくらいに面白い告知ができるかなと思っています。

ーー最近の活動ペース、早くないですか?(笑)ここまでペース早いことってなかったですよね。

ない。正直、理解とか把握とかが遅れてます。ずっとアウトプット状態。

ーーここまで駆り立てられているのって、何かあるんでしょうか。

正直、インディーズシーンに飽きちゃったんだよね。independentの意味が違うじゃんっていう。メジャーになるとか、音楽で食べていくって夢を掲げている人がいると思うんだけど、今はそれ自体が消失しているような時代だと思うのです。その中で、じゃあ俺らはどうするの?っていう活動をしなくてはいけないなと思ってる。とにかくワクワクするようなことがしたいのが一つ。あと、既存のあり方じゃなく、どう生き残るかというサバイバルの真っ最中だということを自覚しないと。死に物狂いで生き残る道を探している。

ーーミュージシャンのサバイヴについては、近年話題になることが多いテーマですよね。果実の強みは確固たる世界観と、そこに結びつくグッズや映像などの作品、そしてデザフェス出展といったさまざまな試みがあります。インディーズバンドとしての表現を提示することで、刺激を受けるバンドが出てきて欲しいです。

そうなれば嬉しいです。活動にロマンがあるのがインディーズだと思うし、インディーズシーン全体でレベルがもっとあがればいい。

ーー果実が自分たちの生き残り方としてこのやり方を選択しているのが、インディーズシーンにとっても大きいかと思います。

レコーディングもミックスも全部俺がやっているから他のアーティストとちょっと音が違うかもしれないんだけど、それも一つの形として意識して欲しいと思います。いろいろなことが下手なんだけど、純度は高いバンドだと思っています。


▶️関連リンク
限りなく透明な果実 OFFICIAL HP

▶️リリース情報
『Troll Tochk(トロールトーチカ)』
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¥2,000-(tax in)
2015.11.25 on sale
1.風を食べる怪物
2.トーチカソング
3.アンティキティラ島
4.象の足音
5.アントワネット
6.ニュルンベルクの卵
7.さよならスカーレット
8.透明な兵士