Aiコラム第10回「ATATAインタビュー〜逆説的思考こそが圧倒的な行動力の源〜」

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以前のコラム(第2回「自分の音楽を広める方法」)で紹介したバンド・ATATAが、3年半ぶりの音源をリリース。そのリリースツアーとして、全国9か所のライブハウスで土日の昼間にライブを行う「WE ARE ATATA ARMY!!! IN JAPAN!!!」を1月30日よりスタートしています。今回のツアーの目玉はなんといっても、全会場“無料”であるということ。
常に斬新な方法で、既存のバンド活動の枠組みを超えた驚きを与えてくれるATATA。今回は、新音源のこと、“無料”ライブツアーのこと、バンド活動の考え方を、バンド最年長であり、活動におけるエンジンとも言えるVo.奈部川 光儀氏に語ってもらいました。

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今作はなにより「ライブ感」にこだわった

-まずは3年ぶりの音源発売おめでとうございます!
奈部川(以下、奈):ありがとうございます。ようやく出ます(笑)

-今作はやはり「一発録り」であることが、今のバンドのモードを象徴しているように思えます。配信やレコード等で発表済の既発曲たちも、発表時から今までのライブで積み重ねた経験が反映され、別の曲みたいですね。
奈:今作を作るにあたって『1 Nite Wonder (※1)』や『Reverberation (※2)』が発表時よりカッコ悪くなってたら負けだなと思ってたんです。録り直したときに、演奏慣れしちゃってるからテンション下がってるだとか、演奏が変にこなれてたらイヤだな、と思っていたので、特に気合を入れて録りました。

-既発曲も含めたアルバム全般に言えることなんですが、今作はキーボードの音が、これまでの作品に比べてかなり全面に出てるなぁと思っていて。それがこのアルバムのサウンド面での大きな特徴になっている気がします。
奈:アソウ君(※3)からミックス後の音源を渡されたときに、俺もキーボードがすごく前に出てるな、と思いました。でも、かえってそれが新しかったから、満場一致でOKしたんです。多分、健太君(※4)自身がATATAで一番成長したんだと思います。ライブ中、メンバー全員があんなに好き勝手やってる中で、間をかいくぐって音を出していくっていう、バンド内での自分の立ち位置を掴みかけてきてる。彼は、キーボードほぼ初心者の状態でバンドに加入しているので、一番色々なことを考えてたはずなんです。そして、その結果が今作で出てきてる。

-健太さんは、ライブだけでなくサウンド面でも牽引役になった感がありますね!今作を「一発録り」で作ることは、最初から決めてたんでしょうか?
奈:決めていました。俺らは基本的に、レコーディングをやろうって決めたときに、最初に軸となる曲を1曲決めたら、その前後のつながりを考えつつ、レコーディング期間中に作れる曲数を決め、配置しちゃう。なので、スタジオに入る前には、アルバム全体の曲調や世界観、歌詞のテーマも全部決定済なんです。

-結構珍しい方式ですね。で、今作のテーマはずばり「ライブ」なんじゃないかなと思っています。全6曲で1本のセットリストという意図があるんじゃないかと。5曲目の『song of joy』が本編最後で、6曲目『The Next Page』がアンコール・・・
奈:そうそう、その通り!今作は、音源でライブを表現したかったんですよ。『The Next Page』は、できた当初は1曲目に置くことも考えたんですが、ATATAのライブならアンコールは攻めでいきたいな、と思って最後に配置しました。結果、作品全体が締まったと思います。

-ATATAって、「ライブ」のためにあらゆる行動なり小ネタなりを仕込んでいると思うんですよね。ATATAにとって「ライブ」ってどういったものでしょうか。
奈:バンドの本質は「ライブ」だっていうのは、常々俺の中にあります。極端なこと言うと、音源も宣伝もすべてライブに向かってるんですよ。ライブに来てもらうために音源作らなきゃならないし、音源作っても聴いてくれる人いなきゃお客さん増えないし、聴いてくれる人増やすためにはその方法を考えなきゃならない。
結成当初、『Fury of the year(以下、Fury)』をHP上から無料配布したとき(※5)、最初は「儲けてもしゃあないから100円でCD-R売ろうか」って話があって。ただ、俺が無料で配ろうって提案したんです。前のバンド終わってからATATA組むまでの間、クラブミュージックばっかり聴いていたんですが、クラブミュージックって音源がほとんど無料って文化があったりする。まず音を聴かせて、ハコに来てもらうって戦略なんですが、これをロックバンドでやってる人そんなにいないな、と思ったんです。そもそも『Fury』は製作にほとんどお金かかってなかったし、この曲をタダで配って、いいと思う人にライブハウスに来てもらったらいいんじゃないか、と。そういう話をみんなとして無料にしたんです。で、いざ初ライブやってみたら、「Fury」で大合唱起きて、やってよかったなって思いました。バンドの実力も、人となりも、やっぱり「ライブ」を通して伝わるものだから、これからも大事にしてきたいです。
ちなみに、俺らはメンバー全員が仕事をしているので、今作は土日2日間に絞ってレコーディングしました。何回も録り直しして、終わったころにはみんなしてすべて出し切った生気のない顔になったんですが(笑)、2日に凝縮した結果、とても「ライブ」感は出たと思います。

ATATAの活動はいつも逆説的

-この作品を引っ提げて行うリリースツアーについて聞かせて下さい。全公演“昼間”“無料”との発表があったとき、「こう来たか!」と驚きました。ズバリ、今回のツアーの本当の「狙い」を教えて下さい!
奈:色んな意味があるんですけどね・・・実は単純じゃないんですよ、俺らも(笑)。ただ、あえてひとつ言うなら、今、「CDが売れなくなり、ライブに人が増えてる」って話をよく聞くじゃないですか。でも、それって本当かよって思ってて。俺らの周りでお客さんがどっと増えてるって話全くないですし。じゃあ、ライブを無料にしたらCDが売れるのか?っていうことを試したいなと思ったんです。なので、今回は音源についてはちゃんとお金もらおうって決めました。

-面白い発想ですが、すごくチャレンジングですよね。ただ、その考えに協力してくれる人が沢山いるのが素敵だと思います。
奈:無駄なキャリアのおかげですよ(笑)。今回の会場になるライブハウスも、全て友達が働いてるハコなので融通利くんですよ。まず「ライブを無料にしたらCDが売れるか試す」って発想をしたうえで、ツアーマネージャーに相談したんです。そうしたら、マネージャーから、どこのライブハウスも昼間にやるなら高くて数万、場所によってはタダでいいって言っているという話を聞いたんです。であれば、昼公演なら目的の無料ライブは実現できるな、と。と同時に、ほぼ無料に近い値段でライブをやらせてもらうので、各会場にも利益を出したいので、昼間俺らの無料ライブでドリンク代を稼いで、そのあと、夜のライブにもちゃんと人が入ればハコにも迷惑掛からないな、と。発想して、提案して、動いてみたら、結果的に全てうまくつながったんです。
ATATAの活動の発想って逆説的なんですよ。まず、自分達が出来ないことから考えるんです。例えば、メンバー全員に家庭があり、仕事がある。大規模な全国ツアーをやりたくても、地方公演やったら翌日の仕事があるので現実的には難しい。でも、ツアーはやりたい。どうしよう・・・・あ、昼ならできるねって感じでマイナスから考えるんです。で、昼に借りたら安かった。だから無料にしよう。マイナスから考え始めたら、結果全部プラスに転がったんですよ。

-できないことから発想するって考え方は昔からなんですか?
奈:結成当時からそうですね。バンド始めた時、みんな30才くらいだし、俺は35才だった。当時の俺らの年齢や置かれたシチュエーションから考えると・・・・若かったら、音楽で飯を食うって夢を描けるじゃないですか。でも、俺らって最初の時点で夢がないんです。自分達がどこまでいけるかって上限が分かってる。仮に、今回のアルバムが受け入れられて、ブレイクしたとしても、平日はライブができないし、要望に応えられないことのほうが圧倒的に多いんですよ。自分達の今の生活スタイルを変えるつもりがないので。だから、自分達ができることのぎりぎりまでやって遊んでみようっていうのがATATAの活動における考え方ですね。

-“昼公演”という部分も聞かせて下さい。日本のライブハウスって昼間にライブやるケースって少ないじゃないですか。俺の周りでライブハウスに行かなくなった人って、やっぱり家族が出来たから夜は遊びづらいってのがあって。そういう人が戻るきっかけになるのかもしれないと感じていたりします。
奈:アメリカなんかだと、21歳以下は夜のライブハウスに入れないので、代わりに昼間にやる「Sunday matinee」って仕組みがあるんですよ。その状況を日本に置き換えれば、夜ライブハウスに来れない家族層が、昼間にやることでこれるようになるからいいじゃないかっていう単純な発想なんです。日本では昼間にやるケースあまりないから、結果的に隙間を狙えたのかなっていう。

−昼公演したらチケット代は安くできるし、新しいファン層に会えるかもしれないし、多くのバンドにとって、1つの可能性になるかもしれないですね。
奈:そうですね。しかも、昼公演は夜公演と違ってライバルも少ないので、今のところマイナスはあまり感じてないですね。音楽は届けたいし、大事なんですけど、最近は、俺らと同年代の人達のライフスタイルに寄り添って活動していきたいという想いが強くなりました。俺らもファンも無理しないし、無理させない。
俺、前のバンドで横山健氏の前座をやらせて貰ったことがあるんですが、そのとき、後ろの方のお客さんは子供連れが結構多かったんです。で、それを見て、「この人たち、横山健とずっと一緒に年取ってるんだな。」って思ってうらやましくて。そういうこともあって、最近は音楽好きだけに届けばいい、みたいな前のバンド時代に思ってた考えはなくなりましたね。

-メンバーにも子供が生まれてきてるのも大きいかもしれないですね。
奈:うんうん。だんだん音楽が生活の一部になってきたというか。去年、仙台で昼公演をやったんですが、子供が結構来てくれたので、フロア全部禁煙にしたんです。で、子供をステージに上げて、ステージから客席にダイブさせてあげたんですよ。その子のダイブはじめはATATAってことになるのが嬉しいですよね。

-今回の無料ツアー、普段ATATAのライブではあまり見かけない中高生とか来たら面白いですね。無料で昼間だからこそティーンも沢山来れるだろうし。
奈:ぶっちゃけて言えば、別にレンタルでも、サイトで落とそうがどうでもよくて、ただ聴いてくれればいいんですよ。10代の子とかお金大変だろうし、タダで聴いて面白かったら、お小遣いの範疇でたまにライブきてよっていう。来てくれたら楽しませるし、使ってもらった時間は絶対に無駄にさせないので。