4人の足並みを揃え、音楽の魔法を魅せつけた、幸せなバンドの「Epiphany」――Wasalabo.レコ発企画”epiphany labo. vol.1”に寄せて

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2016年7月9日、下北沢・吉祥寺を中心に活動する4人組バンド・Wasalabo.が、結成4年目にして初めてのレコ発企画”epiphany labo. vol.1”を下北沢ERAにて開催した。2nd mini album『Epiphany』のリリースを擁した本公演の模様をレポートしながら、彼女たちがこのライブで何を体現したのかについて考察する。

★OTOZINEではアルバム『Epiphany』に関するインタビューも行っている。こちらもあわせてお読みいただきたい。
Wasalabo. 切なさへの志向と4人の絆の邂逅が生んだ、一生ものの音楽――2nd mini album 『Epiphany』インタビュー


実に清々しいライブだった。Wasalabo.という素晴らしいバンドが長く永く続いていくことを確信させる、なんとも眩いステージだった。
結成4年目の彼女たちが初めて開催したレコ発企画、”epiphany labo. vol.1”。前作『ハルアカネ.ep』から3年ぶりにリリースされたミニアルバム『Epiphany』を擁して行われたこのライブは、いわば「Wasalabo.第二章の幕開け」とでもいうような、とても重要な意味合いを持っていた。というのもここ数年、各々のメンバーの諸事情により、このバンドは4人での活動が難しくなっていたのだ。だが彼女たちは『Epiphany』によって再び通じ合い、この企画の最後にはここから新たなスタートを切ると宣誓した。もしかしたら、バンドのターニングポイントとして記憶されることになるのではと思ってしまうくらい、このライブは本当に貴重なものとなった。

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共演アーティストであるSatomimagae、Gecko & Tokage Parade、暮らしのヒントが各々の音楽でリリースを祝福すると、トリとしてこの企画の主役であるWasalabo.がステージに登場。4人がそれぞれの位置につくと、早速『Epiphany』の1曲目である”morning glow”へ。「morning glow」は朝焼けという意味だが、ririによるピアノの伴奏はまさに太陽が昇ってくる景色そのものを実体化しているようだ。音色を聴くだけで日差しのぬくもりを肌に感じ、空がだんだん明るくなって光が地に散らばっていく様子が目に浮かんでくる。さらに杉山タカアキの力強い4つ打ちのキックやtightの暖かみのあるベース、ミオの重厚で伸びやかな歌声が加わり、聴き手の胸をどんどん高鳴らせていく。聴覚以外の感覚にまではたらきかける彼女たちの音楽に、ライブの初っ端から心を掴まれた。

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太陽の優しい煌めきを奏でたririが今度はジャジーでリズミカルな伴奏を始めると、「こんばんは、Wasalabo.です。よろしくお願いします」とミオが観客に声を投げかける。続いて披露するのは”這う夜”。これまでの彼女たちの楽曲の中で一番リズム隊のキレを感じさせるナンバーだ。tightのベースはイントロから太い音を華麗にしならせ、 杉山タカアキのドラムはパワフルな叩きっぷりでキメを入れ込む。間奏での2人のソロ演奏はリズム隊ならではの躍動感に富んでおり、思わず息を呑んで見入ってしまった。と同時に思ったのが、Wasalabo.はかなり頑丈な基盤の上に成り立っているバンドなのだな、ということだ。これまではピアノや歌といった上物のメロディがリスナーの耳をリードしてきた感じがあったが、ドラムやベースの動きに重きを置いた”這う夜”という新風が吹き込んだことで、バンドの根幹の部分、つまりリズム隊の凄みを知ることができたのである。だからこそこの曲を初めて聴いたとき、彼女たちのプレイヤビリティの振り幅の大きさを感じたし、今回ライブで聴いてそれを確信できたのだ。Wasalabo.が実に多才なバンドであるという事実を、自身の肌をもって思い知らされた瞬間だった。

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“wasabossa”、”HOLIDAY”といった前作『ハルアカネ.ep』の楽曲を挟み、ミオがここでMCを入れる。「応援してくださる方々がいて、今回企画を開催することができました。ありがとうございます」。彼女が一言そう言うと、フロアからは大きくて温かな拍手が湧き起こる。それはまるで、あなたたちの企画をずっと待ってたよという意思表示のようだ。その思いをしかと受け取ったバンドは、それ以上は語らず”カサブランカ”へ。グルーヴ感と緊迫感が交差するサウンドをミオのしっとりとした歌声がまとめあげ、聴いてくれていることへのお返しと言わんばかりにオーディエンスを魅了した。

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3拍子のリズムに寄りかかるように歌い上げるミオのボーカルが情緒的だった”嘘”から、1st mini album『ハルアカネ.ep』のリード曲であるミディアムバラード”ハルアカネ”へ。この曲は、言ってしまえばWasalabo.の始まりを象徴する曲であると思う。『ハルアカネ.ep』はバンドが初めてリリースした作品であり、かつその中でリードとして打ち出されたこの楽曲には、彼女たちの持ち味であるほろりとしてしまうくらいの切なさや、心の琴線に触れるまでに美しい旋律が詰め込まれているからだ。その「始まりの音」をこのタイミング――4人が再び揃ったタイミングで鳴らすのは、『Epiphany』を擁したレコ発企画とはいえ、やはり意味があることではないだろうか。そんなことを頭の片隅で考えていたせいか、間奏でririと杉山タカアキがアイコンタクトを取り、キーボードとドラムを息を合わせて演奏するという何気ないシーンを見たとき、「あ、この景色はこれから先も何回でも見られる気がする」という予感を勝手に抱いた。バンドがここからまた始まっていくということを、直感的に、だがしっかりと信じることができたのだ。

本編ラストは”水の器”。ストリングスのような心地よい揺らぎを持つ歌声に、湧水のように透き通った音色を放つピアノ、上物のメロディにそっと寄り添うベース、歌とともにエモーショナルに高鳴っていくドラムが絡み、胸に押し寄せるほどの感動を生み出していた。曲の最後に杉山タカアキのドラムスティックが勢い余って落ちてしまい、手で叩かざるを得なくなったというハプニングもあったが、それでも会場は多幸感で満ち溢れていた。

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アンコール。ririがこのイベントへの思いを語る。「結成4年目にして、初めて企画ライブができたことに心から感謝しています。それも場所を貸してくれたERAの皆さん、そして今日来てくださっている皆さんのおかげです。本当に嬉しい私たちです。ここでまた4人の足並みを揃えて、新たなスタートラインを切って、いろいろな人や音楽との出会いに胸を弾ませていきたいと思います」。そして演奏されたこの日最後のナンバー・”sunlight”。<照らせ 照らせ 私の道を>――まるでバンドの未来に託す祈りのような言葉が、会場いっぱいに響き渡るミオの美麗で包容力のある声を通じ、聴き手の心を直に震わせにくる。そこに楽器隊の情動的な演奏も相まり、感極まって思わず視界をにじませてしまった。やはり、Wasalabo.は続かなければいけないバンドだ――。そんなことを思わずにはいられないほど、本当に心を打たれたラストだった。9曲を演奏し切ったメンバーは、満面の笑みでステージを後にした。

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終演後の下北沢ERAは、うっとりとした空気に包まれていた。いつも以上に観客が多かったことを考慮すると、おそらく初めて彼女たちのライブを観た、もしくは曲を聴いたという人は多かったと思う。そんな人たちも皆、ライブが終わった直後から至福の時を得たりと言わんばかりの恍惚とした表情を浮かべていた。まるで、会場全体が音楽の魔法にかけられたかのようだった。
Wasalabo.のメンバーによると、アルバムタイトルである『Epiphany』には、「ひらめき」や「直感」という意味があるという。彼女たちの「ひらめき」から生まれた色とりどりの音楽はこの日、4人の足並みを揃え、そして多くの人に感動という魔法をかけた。演者も聴き手も幸福にした『Epiphany』の奇跡は、きっとこの1日だけで終わることはない。むしろここを出発点として、至る所に咲いていくだろう。

[Text:笠原瑛里 Photo:西村乙羽]


▶セットリスト
1. morning glow
2. 這う夜
3. wasabossa
4. HOLIDAY
5. カサブランカ
6. 嘘
7. ハルアカネ
8. 水の器
en. sunlight

▶関連リンク
Wasalabo. Official Web Site
Wasalabo. 切なさへの志向と4人の絆の邂逅が生んだ、一生ものの音楽――2nd mini album 『Epiphany』インタビュー