限りなく透明な果実 フクシマサトル 本当に良い作品を届けるために

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なんて美しいロックバンドがいるんだろうと思ったのが、限りなく透明な果実との出会いだった。
2015年1月にリリースした今作「LILI&HAL(リリエンタール)」は、キャリア初の流通盤として広くアプローチをした作品になる。これまでのデモやE.P.はライブ会場と一部店舗のみの扱いで、映像のプロモーションも控えた活動方針を取っていた。それが今回流通に加え2本のMVも制作しているのだ。
取材に応じてくれたフクシマサトル(Vo/Gt)は「良い作品だ」と終始口にした。誇りを持って世に送った今作は、不器用ながらに飛行実験を繰り返したドイツの航空学者・リリエンタール兄弟に思いを馳せて作られている。自らも弟・フクシマアキラ(Ba)と活動する兄弟バンドとして、またバンドを通じた悔しさや孤独感を抱きながら、曲解説や企画ライブへの経緯を語ってくれた。

取材:加藤彩可


読書を通じた楽曲作りや、理系的アプローチが世界観に

——結成は2011年ということなのですが、バンドが始まった経緯は?

フクシマサトル(Vo/Gt):前に組んでいたバンドが解散して、仕方なく弟と組んだ。周りに弟しか仲の良いベースがいなくて、嫌々組んだ感じ。バンド組むまでは全然別のところで生活していたし、1度ライブ観た程度しか弟の音楽の活動は知らなかった。

——サトルさんと音楽の出会いを教えていただけますか?

サトル:母親がピアノの先生で親父もクラシックが好きだったから、物心が付いた時から家ではクラシックが流れていたかな。それ以降は中学の頃にMy Little Loverの CD を買ったのが最初で、中3になると LUNA SEA とかヴィジュアル系、高校2年くらいでブルーハーツを聴いてた。俺は両方好きだったんだけど、 周りの友人はヴィジュアル系か青春パンクか二極化してたね。初期BUMPをすごく小さい箱へ観に行ったりもした。ほどなくしてSyrup16g、ART-SCHOOL が出てきて「こんなの出て来たんだ」ってリアルタイムで観ていた。最近はあまり聴かないけどね。でもクラシックは今も聴くんだ。あとはサイモン&ガーファンクルとか聴く。図書館で結構レコードを聴いたりもする。

——図書館は頻繁に通われているんですか?

サトル:うん、週1で絶対行く。レコードを持ってないからそこで聴いたりする。

——限りなく透明な果実のライブでも、「サトル’s 図書館」をやられていますね。

サトル:本を読み始めたのは中学生くらいだけど、別に読書家ってほどじゃない。あ、でも最近ちょっと多いかも。歌詞で行き詰まる時に本を読んで表現とか勉強することがある。俺は楽曲と本が密接に関わっている部分が多いから、歌詞を違う方面から捉えてもらうのも面白いかなと思って。音楽って、音を聴いて歌詞を読むだけじゃん?それ以上の楽しみ方も出来るよっていう、1つの提示がしたいなと思った。

——物販のグッズなども凝られていて、デザインもすごく綺麗ですよね。

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サトル:あれも全部楽曲とかバンドの世界観が基にあるから、それを広げたいなと思って作っているんです。本も持っていった本は結構借りていってくれて…ほとんど返って来ないんだけど(笑)。好評のようです。

——普段はどんな本がお好きですか?

サトル:基本的に推理小説が好き。東野圭吾も好きだし、森博嗣も好きかな、理系っぽいんで。僕は完全に理系で、僕も弟も数学人間なんです。弟の方が実は頭いい(笑)。

——小さい頃はどんなお子さんでしたか?

サトル:それはもう、天使のような(笑)。純粋無垢で、とにかく可愛かったらしい。疑うことを知らない、素直な子だった。よだれをたらした弟に精悍な兄って感じ(笑)。あとは結構没頭しちゃうタイプの子供だった。1回集中し出すと誰が何と言おうと止めない。今もだけど、バンドやりだしたらとまらない(笑)。で、人生それ中心に回っていて。みんな「仕方ない」って思っている。誰も「止めとけよ」って言わない。

——中・高校生の頃になってくると、どんな感じになってましたか?

サトル:中二病の3乗みたいな感じだった。クラス全員死ねとか思っていたし、マシンガンを持っていたら一番最初に全部ぶっ放していたと思う。中3の時にすごく好きだった子に告白されて、受験終わったら返事しようと思っていたから頑張って受かったんだけど、その告白が実は罰ゲームか何かだったらしくて…それで捻くれて高校3年間はずっと落ちてた。

——楽器自体は、お母様の影響でピアノをされていたとか?

サトル:いや、ピアノはちょこっとだけ。ギターは中学の受験が終わってからだね。ギター始めたのも、純粋にさっきのその子のため。その子が音楽好きな男の子にキャーキャー言ってるのを知ってたから。罰ゲームだったって知ったあと、高校3年間は学園祭で演奏する機会があって、3年間誘っていて。全部来てくれなかったんだけどね。最後にその子のお父さんから「うちの娘に関わるな」って言われた(笑)。年に1回しかアプローチかけなかったのに(笑)。

——それは切ない…。オリジナル曲を作り出したのはいつ頃からでしょう?

サトル:大学1年くらいからかな。最初はギターばっかり弾いてたんだけど、そのうち歌うことを覚えて、歌詞も書き始めて…。実は歌詞書くのが一番苦手かな。すごく時間がかかる。

——曲の構成を考えるっていうのは、理論的だったり規則的だったりで理系っぽいイメージがあるんですね。でも歌詞はその点文系的アプローチという印象もあるんですが。

サトル:曲は無限に出来ると思う。奇抜なアレンジとかも、前の音源を聞いてもらえば色んなことをやっているのが分かると思う。メンバーにも恵まれているし、前衛的なことは1から10まで自信持ってやれる。でも世界観を作るっていうのは、色々全部やれる上で敢えてこれをやらないっていう選択をすることだと思うんだ。世界観の芯がぶれないから、あえて色々なことをやる必要はないなと最近思っています。

——確かに今作は今までと違って世界観がまとまっていると思う反面で、前衛的なアプローチが抑えられている印象がありました。

サトル:そうだね。今回のCDは純粋にリリエンタールについて書きたかっただけだから、本当にシンプルです。

——今までの曲作りも、今回のようにコンセプトがあって作ることが多かった?

サトル:うん。「この曲はこれについて書く」ってコンセプトがないと進まないかな。今作は、たまたま曲を並べていった時に「これらの曲は空を飛びたがっている」って思って、そこに精神性が一貫しているなと感じた。それが7曲まとまったからアルバムになったんだよね。