Aiコラム第8回「5月/MAY」

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突然ですが、僕は「野外フェス」が大好きです。15歳の頃からフェスに行き始め、これまで行った延べ回数だけでみたら50回を超えているかもしれません。僕が野外フェスに恋い焦がれる理由は沢山ありますがそれはまたの機会にするとして、今回はフェスに憧れるきっかけとロックバンドのかっこよさを教えてくれた人(彼は2年前の5月27日にどっか遠くに旅立ってしまったが)のことを書きたいと思います。

2000年3月、進学先の高校も決まって友人の家に入り浸っていた僕は、友人のお姉ちゃんから「することないならこれでも聴いたら?」といくつかのCDを渡されました。当時、最も心を惹かれたのはくるり「図鑑」と椎名林檎「無罪モラトリアム」でしたが、どうしても気になるアルバムがもう一枚。なにかの装置(これがギターのエフェクターだと知ることはもっと後の話)のようなジャケット写真に、「2月」から始まり「12月」で終わり楽曲タイトル達、台風の日に外を歩いた時に聞こえてくる風雨と同じ3ように60度から響いてくる轟音、そして決してうまいとは言えないけれど轟音に負けないくらい大声で力のあるボーカル・・・bloodthirsty butchers(以下、ブッチャーズ)の「kocorono」でした。

声も楽曲もことさらに大好きなものというわけでもないのに、どうしても耳に残って離れない彼らのことをそのお姉ちゃんに話すと、「そこきたか!」と笑いながら渡してくれた1本のVHS。持って帰って再生すると、ブラウン管の向こうには北海道の雄大な自然と響き渡るロックンロールの素晴らしい映像。そしてビデオもほぼ終盤、流れてきたのはブッチャーズの7月でした。

白み始める空に響き渡るギターの轟音、そして曲の最後にステージから放り投げられたギターが綺麗な放物線を描いて落ちていき、地面にぶつかった瞬間に破裂音をたてて残響音を残していく・・・・・見終わった後、これがロックンロールで、こういうCDでは感じることができない風景とセットになった感動がフェスで、俺は必ずここに行かなきゃならないということを感じました(数年後、初めて石狩の地を踏み彼らのライブを見た時、それはもう感動したものです)。

音源で聴いただけではイマイチ魅力が掴みきれなかった何かが、実際のライブを見ることで理解できるようになるということを最初に教えてくれたのがブッチャーズでした。どちらかというと抽象的だったり心象風景だったりする不明瞭な歌詞も、強弱というよりもマイクに向かって声を張り上げるような大声も、鼓膜から入って脳みそを揺らすような轟音も、それがライブハウスのステージに当たるスポットライトだったり、自然風景が溶け込んだフェス会場だったりと混ざり合うといいようもなく感情が込み上げてきてただただ拳を振り上げて口ずさむ、僕がブッチャーズを好きだったのはそういうことだったんだと思います(思えば、最近多用される「エモい」という感情表現を僕が最初に使ったのも彼らに対してでした)。

そしてブッチャーズといえば、フロントマンの吉村さんの強烈な個性もその魅力の一つ。よく吉村さんは「大きなジャイアン」と言われ、その豪快な性格から生まれた様々なエピソードがネット上には溢れています(笑)。ブッチャーズのライブには年に数回は足を運んでいた僕ですが、高校二年の時にライブ終わりにいいちこ片手にフロアを歩く吉村さんに話しかけたことがありました。もう緊張しまくっていて多分しどろもどろだったと思うんですが、おそらくRSR99で感じた感動を一生懸命話していたはずです。そうしたら、吉村さんは満面の笑顔で僕の頭を叩いて「20歳超えたらライブハウスで酒飲むか?ん??」と言いながらピックをくれました。そのピックは今でも財布の中に入れていつも持っています。

そんな感じで、なんだかんだで10年以上ライブに通っていた13年、仕事中にふと携帯を開いたら目に飛び込んできたのが吉村さん死去のニュースでした。いや、もう全く何がなんだかわからなくて、その日は残ってる仕事も終わらせないまま定時で帰って、とりあえずkocoronoをステレオで流しながら、吉村さんのトレードマークであるいいちこを飲んでました。それでもイマイチ実感がわかなくて、今年のフェスにもブッチャーズの名前がラインナップされるんじゃないかな、なんて思う日々を過ごしながら、6月27日に新代田FEVERで行われた追悼イベント「吉村秀樹会」に行ったんです。会場に入ってすぐ、ステージの前に大きないいちこの瓶が置いているのが目に入って、そこには鹿野淳さんが言葉にできないようなメッセージを書いていました(その日、地方に行かなければならなかった鹿野さんは開場一番に駆けつけいいちこを置いていったとのこと)。それを見てなんとなく実感が湧いてきたんです。その日は演奏はないって言われてたのにいつのまにかアーティストが次から次へと演奏始めて、本当に愛されてる人なんだなぁなんて思ってたら涙がでてきました。この日、来場者に形見分けとして配られた吉村さんのCD、今でも大切に聴いてます。

これを書いてる時も、なんか気持ちが込み上げてきて、最後はもう何か期待かわからなくなってきちゃったんですけど、僕がフェスなりロックなりが好きになるきっかけを作ってくれたブッチャーズ、とても大切な存在できっとこれからも5月が来るたびに思い出すはずなんです。5月27日には新代田FEVERで吉村秀樹会が開かれます。今年も行きますよ、いいちこもって。

▶プロフィール
ai
 

 

 

 

 

Ai_Tkgk
音楽を聴くだけでなく、「語る」ことが大好きなアラサーサラリーマン。
国際輸送部門で働きながら、プライベートでは音楽ライターの二足のわらじ。
15歳の時に、偶然行ったROCK IN JAPAN FES.2000とAIR JAM 2000に参加し、 ロック・パンクの洗礼を受けて以来、ライブハウスとフェスに通い詰めて10年以上。
得意分野は邦楽ロック、ただ、基本的には洋邦・ジャンル問わずなんでも聴く雑食系。
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