Hello!!! あらゆるものに「ヘロー!」と言いたくて

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Hello!!!というバンドが「海辺のグッドバイ」という作品を6月10日からリリースする。ELECTRIC LUNCHとして活動してきた彼らが、改名して最初に出す作品になる。
ELECTRIC LUNCHと言えば、前衛的な轟音にハイトーンボイスの男性ボーカルで、陰鬱ながらもリズミカルな楽曲を奏でる男女4人組バンド。2014年はennとの共同企画「eL〜エル〜」で下北沢連続企画を行い、精力的に活動をしてきた。彼らのバイタリティには驚かされるばかりだったが、改名すると聞いて更に驚いた。
Hello!!!というバンド名からも、今までの陰鬱としたイメージを払拭するようなサウンドを期待していた。そしてリード曲「海辺のグッドバイ」のMVがアップされ、なんて清々しく、美しいバンドになったんだと感慨深さを感じた。
今回、ボーカルの道原シンジとベースのかーやに話を聞き、この清々しいサウンドに辿り着くまでに彼らが抱えていた苦悩、そして現在に至るまでの壮絶な日々を聞くことが出来た。

取材:加藤彩可 / 撮影:児玉駿介


「ELECTRIC LUNCHってこういう音楽なんだ」と勝手に音楽性を狭めていた

——元々ELECTRIC LUNCHとして活動されてきて今回Hello!!!に改名されたということで、どういう心境で改名しようと思ったんですか?

道原シンジ(Vo & Gt):ELECTRIC LUNCHで長い間活動してきて作っているうちに「ELECTRIC LUNCHってこういう音楽なんだ」と自分で勝手に音楽性を狭めちゃっていたんです。新しい作品を作るにしてもELECTRIC LUNCHはこうだからこういう曲を作らなきゃみたいのがどこかにあった。そこから抜け出せなくなってしまって、作曲にも満足がいかなくなった。今作「海辺のグッドバイ」という作品をリリースするんですけども、実はその前にアルバムを1枚分作っていたんです。でも納得いかず、レコーディング1週間前に全部破棄して…(笑)。そこから盲目的に作曲していたら2ヶ月ぐらいで全曲出来たんだよね。その楽曲達は自分が狭めていたELECTRIC LUNCHの世界から飛び出したものじゃないかなと思えて、これを新しい始まりにしたいなって思ったのが改名の一番の理由かな。

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——前の楽曲の制作はいつ頃作っていたんですか?

かーや(Ba):2014年の冬の曲とかあったね。1年かけて作って、季節を3つぐらい通り過ぎているんだって思って自分で感動していたの。そしたら、その曲やらないよって言われて、「あっ、そっか」って(笑)。

——(笑)。

道原:本当は2ndアルバム作って、その流れで3rdを出そうと思っていた。その時期にメンバーチェンジもあって、新メンバーにドラムの真帆が入ったんですよ。正規メンバーで4人揃うっていうのが初めてだったから、作曲してきたものを誰とやるか明確じゃないまま作っちゃった。やっぱり自分の目標は売れる、売れないよりは、良い作品を作るってことに焦点がいっていたので、そういう観点からすると色んな人に迷惑を掛けちゃうけど、全部変えちゃおうって思ったんだ。その頃の僕は狂気がかっていましたね。自分でも二度とあんなことはしたくない(笑)。

日記を付けていて、“シンジくんがヤバい”って書いてあった

——シンジくん的に前までのELECTRIC LUNCH時代は音楽的な部分でどう感じていました?

道原:結構その時は売れることを意識していた。ただそのせいで、ちょっと高みには行けなかったのかな。そこで全部一回取っ払って、自己満足にやってみようって思ったんだけど、自己満足に作ったつもりがメンバーも含め評判が良かったんです。それはエンジニアさんのお陰なんだけどね。エンジニアさんがHMCの池田さんって方だったんですけど、すごいメンバーの様な感じでやってくれて、自己満足で収まらない、外にも向けられる形に仕上げてくれた。ミーティングもガチガチにして。

——かーやさん的には当時のシンジ君の様子をみてどういう風に思っていたんですか?

かーや:私は日記を付けていて、2月の日記に“シンジ君がやばい”って書いてあった(笑)。結構ずっとピリピリしていたけど、「は〜」みたいな時期もあって、さらに「何でも言え」みたいな時期もあって…波のある人なの。もう5年くらいの付き合いだから、そういう人だってわかっていたんだけど、今回のはすごかった。

道原:命掛けて作りたかったんですよ。

かーや:9月の打ち上げのとき私号泣したじゃん。バンドの話しをしていて、泣きたくないけど泣いちゃうって思ったから一回出ようって思って出て、そのときennってバンドと共同で企画をやっていたからennのメンバーも来てくれたの。その後うちのギターの灰野くんが迎えにきてくれて、戻ってまた話して、じゃあ録り直そうってなってね。

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道原:作曲って作曲者の日々全てが作曲になると思うんです。だからもっと日々に近づいて、己とは何かを追求してから作ろうって。追いつめられたからこそ、良いものが作れるんじゃないかって思う。ゴッホだって狂人になったし、ニーチェだってそうじゃないですか。狂人になって芸術を作る。それも一つの手だと思う。僕はそっち側を使ったなって思います。

かーや:作り直して良かったよね。

道原:作り直して良かった。気持ち的にはみんな納得いってなかったから。まあでも早く出来上がって逆にすごいなって思うよ。もっと長くなると思ったからさ。うちら的にはありえないんです。2ヶ月で仕上げるなんて。ずっと暗い世界にいて、出てこないよう頑張ってました。

初めて満足の出来る作品が出来て、真っ新な気持ちになれた

——その間にシンジ君はひたすら家で作っていた?

道原:家でひたすら作っていた。いつもアレンジはメンバーにお任せなんですけど、今回はお任せしつつ口を出したね。その時は押し付けがましくなっていた。良いか悪いかは別にして、命懸けてやっている気持ちでずばずば言っていた。お前のフレーズ何も感じねえんだよみたいな。考え直してこいみたいな。今はそれが良くないと思うんだけど(笑)。

——シンジ君の中で、今できた作品「海辺のグッドバイ」で上手くいったなと思う曲とかありますか?

道原:「海辺のグッドバイ」、「BIRTHDAY」、「holyland」かな。でもほとんどだね。上手くいったというか、はじめて満足いく作品が出来上がったんですね。これが出来たからこそ真っ新な気持ちでまた作曲しようって思えた。そういう意味でも良い区切りになった作品ではあって、満足いったからこそ、始まりでもあるし終着でもある。苦しんだ結果を出せたのかなと思いますね。

——すごく瑞々しい作品だと思ったんですね。エレランの時から綺麗なサウンドを鳴らしているバンドだったと思うけど、そこからより澄んだ感じがした。光が差した感じがします。

道原:やっぱり暗いところにいると光を敏感に感じます。こんなに光っているんだって。

かーや:今までの曲って、物語のお話しのイメージだった。この人はすごく本を読む人で、ロシア文学とかすごく好きなんですね。その曲を持ってきて弾き語って、みんなでセッションして作ることが多いんだけど、最初に弾き語りで弾いてくれた時のイメージがだいたい共有ができて、そこから作っていく。そうすると、ちょっと靄がかかってる、物語の中っぽい幻想的な光のイメージになることが多かった。曲自体も現実的な感じよりかは、ちょっと幻の中のお話みたいなイメージだったの。でも今回の作品はすごく身近で、現実的な話し。「海辺のグッドバイ」も“あなたと私”って感じがするし、世界が変わったのかな。澄んだ光になったなって思う。

——基本的に曲を作る時にインスパイアされるものって、本であったりとか?

道原:いや、いつもはパッと思ったままにやっていた。最近はずっと籠っていて、俺がやりたい音楽とは何かを考えて作っていた。メンバーからしてもそういうのは初めてだったと思うから大変だったかもしれないけど、それでも応えてくれて。

かーや:そうでもなかったよ?ギターの(灰野)勇気くんは大変だったかもしれないけど。灰野くんは練習が趣味なんだけど、スタジオでやって何となくイメージを掴んでから、家に帰って、自分の引き出しを開けまくって「これかな?」って思うものを持って来る。でも今回は「違う」「もっとやれんだろ」「何も感じない」まで言われていた(笑)。灰野くんも何もやっていないわけじゃないから、余計に大変なんだろうなって思っていた。本人も3日風呂入らずにずっとやっていたとか言っていたし。

リスナーのことよりも、自分のことを考えて作ったことが逆によかった

——シンジくんは作る時、ジャンルよりも感情を音にしていくタイプですか?

道原:難しいな〜。ジャンルとかあんまり考えたことはなかったかも。感情というより、感じたことを歌っていたのかな。気持ちよくなれるように。

——今まででは気持ちよく思えなかったことが、今回作品の中で気持ちよくなれたポイントがある。具体的にどの辺りで違っていました?

道原:最後の曲に「また明日もどうか会いましょう」という曲があって、これはリアルな日々のことを歌えたと思っている。1曲目の「海辺のグッドバイ」では「思い出せたら美しいね」っていうフレーズがあって、これも日常の中で時々自分が思っていること。だから自分としてはかなりさらけ出すことが出来たかな。今までのエレランでは比較的こうした感情を隠していた。今回はダイレクトに、伝わりやすく言葉を乗せたというのはあります。自分が思い出しやすいようにシンプルで分かりやすい歌詞を目指しました。

——じゃあ、言葉がどうやったら伝わりやすいかを考えていた感じ?

道原:伝わりやすいかどうかもあるんだけれど、それは結果的な話かな。ライブで歌っていてその歌詞の感情になれないことってあると思うんですけど、いつでもその感情になれるように書いたこともデカい。言葉がリスナーにも繋がってくるって思えたのは後からだね。リスナーよりも、自分のことを考えて作った方がいいんだって思ったから。あとサウンドに関しては本当にレコーディングエンジニアの池田さんが外に向くようにプロデュースしてくれたのが大きい。

かーや:プロデューサーというか、ディレクターって感じだよね。「海辺のグッドバイ」を一番に録って、最初にラフミックスしてくれたの。もともと私はこの曲が大好きなんだけど、それを聴いた時に、イメージ出来ていたことが更に具体的なイメージとして沸いて、どっちに曲が向いているのかが分かった。だからどうしたらもっとこの曲のいいところが伝わるのかを引き出してくれたなと思う。

道原:レコーディング中に手に入れたものも多いし、レコーディングで気付けたこともあった。そのくらい密にやってくれた。エンジニアとのコミュニケーションってすごく大事だと思うんですけど、今回は完全に信用しようって思ったら、それ以上に返してくれた。この作品を作り終わったら、また違う作品を作りたいと思った。逆にレコーディング中に固まっちゃって、それがまたすごいなと思う。

もっと自分の感情を素直に出して、人間臭い作品を作りたい

——いま作るならどんなものを作りたい?

道原:握りこぶしのあるもの。歌謡曲とか。

かーや:演歌じゃん!

道原:でも本当に歌謡っぽいものは作りたいんだよ。歌詞についても、もっと具体的に、人間臭く、自分を歌いたい。今回のでもまだ抽象的なものが多いと思う。これからは更に人間臭くやってみようかなって思う。サウンドがそこに合わなくなって来たら、メンバーも合わせてくれるんだろうという信用もある。

かーや:歌詞を人間臭くするってどういう感じ?

道原:いろいろあるけど、己の真理みたいなもの。いま色んな宗教を勉強していて、海外に飛んで触れに行ったりしているの。僕はミチハラ教を作りたいんですよ!

一同:(笑)。

かーや:でもこの人は何かの宗教にハマる人ではなくて(笑)。この間もエジプトに行っていて、あと台湾も行っていたよね。今度はインドに行くんでしょ?

道原:うん、ネパールとインド。

かーや:昔から思想について本とかも読んでいるし、宗教の本も好きなんだけど、ただそれ1つにハマって崇め奉るみたいな感じではないんだよね。本当に勉強している感覚というか。結局は自分だって思っているもんね?

道原:エジプトに行ってイスラムを見て、イスラムって過激じゃなくて穏やかな宗教なんだけど、信じることは出来なかった。聖書も読んで、祈る人々に心を打たれたけど、信仰するかどうかは別なの。それは国かもしれないし、自分のせいかもしれないんだけど、信仰をする気はないかな。でもパワーにはなった。イスラムに触れたことは結構大きくて、自分の生活を穏やかにしてくれたし、ライブのスタイルも変えてくれたのかなと思う。
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——ライブのスタイルを変えてくれたの?

道原:音楽を楽しむようになった。もっと人生規模で音楽を考えるようになっちゃって。

かーや:最近よくライブで笑うようになったよね。

道原:前までは捨て身でやっていて、音楽で食おうと思っていた。でも今は音楽は人生の一部で、生活があってその上での音楽なんだと思ったわけなんですよ。色んな田舎に行って人々に触れていく中で、音楽をせずにいたら、そう思った。趣味でやるとかそういう話ではなく。今回の作品が出来て満足出来たこともあるけど、これからは人生として道原シンジを歌にしていこうと思う。だから穏やかな気持ちであれば穏やかな曲が出来ると思うし、切ない気持ちなら切ない曲が出来ると思うから、素直に出していきたい。人間臭さってそういうことなのかな。